2020年5月12日
都庁職衛生局支部

1 はじめに
 東京都は2020年3月31日、都立病院・東京都保健医療公社病院(以下、公社病院とういう)を地方独立行政法人化(以下、独法化という)するとした「新たな病院運営改革ビジョン~大都市東京を医療で支え続けるために~」(以下、「ビジョン」という)を策定、発表しました。
「高齢化の急速な進展など、医療を取り巻く環境の変化の中でも、行政的医療を安定的に提供するなど、都立病院の担う役割を果たし続けていく」とし、2022年度内を目途に法人を設立すると明記しています。
 都庁職衛生局支部は、独法化方針の策定に対し強く抗議し、撤回を求めるものです。

2 新型コロナウイルス感染症拡大を止める重要な時期の策定・発表に憤り
都立病院・公社病院は、新型コロナウイルス感染者を初動時から受け入れています。感染症が拡大する状況の中、行政医療、高度専門医療を継続し、さらに新型コロナウイルス感染症患者の診療・治療を行い、業務量は加速度的に増大しています。
知事要請に応じ新型コロナウイルス感染症に対応する診療や病床の確保、増床など、感染症治療と感染拡大を防止するため闘っています。日ごろから感染症を受け入れるためのベッド数などの設備や体制を整え、受け入れ訓練などの職員教育を行ってきたからこそ対応できたことです。
新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れている病院では、医師・看護師をはじめ医療関係スタッフが不安・緊張・強いストレス状態の中で懸命に働いています。最前線でたたかっている職員の気持ちをないがしろにする「ビジョン」を策定・発表した東京都に対し、強い憤りを禁じ得ません。

3 独法化の目的は財政支出の削減、人件費の削減
 「ビジョン」では「無駄な経費の一層の削減を図る」、「最小の経費で最大のサービスを提供していかなければなりません」と述べ、「コストの見直しをさらに進め」ることで「都の財政負担の軽減にもつながっていく」としています。独法化の目的が財政支出の削減にあることは明らかです。
人件費は財政支出の大部分を占めています。経営に視点が置かれ独法化された国立病院では、人員削減・非正規化、業務の外注化などが行われています。
病院経営本部は「職員団体とも話しながら検討します」、「現給補償はされます」、「法人となれば、独自に給与制度を作っていけるというメリットがある」と説明しています。「現給補償はされます」が、給与カーブなど「独自の給与制度」の具体的な内容は示されていません。
都立病院の独法化で、7,000人の看護師や医療職員が自身の意思にかかわらず公務員の身分をはく奪されます。今までの労働条件や組合との合意事項などは継承されません。また、退職時は公務員としての在職期間を法人の職員としての在職期間とみなして取り扱われますが、退職金の計算方法は示されていません。年収は数十万の減額となる可能性があり、生涯年収は数千万の減額となることが危惧されます。
人件費の削減により支出を抑えることで人材は離れ、医師・看護婦不足はますます深刻となります。
大阪では2006年度、5つの府立病院が独法化されました。都道府県立病院では初の独法化です。初年度に事務部門で76人削減、看護師など職員の賃金カーブのフラット化により、人件費削減が17.2億円に上っています。人件費削減により「収支改善」と報告しているのです。

4 直営だからこそ「迅速かつ柔軟な対応」が可能
「ビジョン」では、現在の経営体制を「地方自治法や地方公務員法などの制限」があり、「ニーズに応じたタイムリーな対応が困難」であるとし、「予算単年度主義の下」「迅速かつ柔軟な対応が難しい状況」と述べています。
しかし、新型コロナウイルス感染症への対応では、予算面で補正予算を組み、人員面では他部署の応援要請を行うなど、「迅速かつ柔軟な対応」を行っています。年度途中の採用も行っています。現在の東京都直営の状態だからこそ「ニーズに応じたタイムリーな対応」「迅速かつ柔軟な対応」が出来たことです。
 独法化となれば、法人の方針で進められ、財政基盤が盤石でない中では、「ニーズに応じたタイムリーな対応」「迅速かつ柔軟な対応」は困難です。
「ビジョン」は都民・職員に真実を隠し、欺くものです。

5「だれもが、いつでもかかれる病院」ではなくなってしまう
都立病院・公社病院は、感染症、難病、周産期、小児、島しょ、精神科、災害など、公共性の高い医療(行政的医療)を担っています。現在の診療報酬制度で採算が取れない部分は、法律に基づき東京都が財政負担しています。民間病院では、このような採算の取れない医療を担うことは出来ません。
神奈川県では、2010年度に県立5病院を独法化しました。「(県からの)運営費として132億円(2009年度)を一般会計から繰り入れていたが、2016年度には104億円と約2割減った」と独法化を自画自賛いますが、神奈川県立病院機構は2018年度決算は25億1,200万円の経常赤字を出しています。
独法化されれば経営に重点が置かれ、診療報酬(医療部分)で収入が得られない医療は縮小していきます。
病院が収入を得るためには診療報酬(医療費)以外で収入を増やすしかありません。個室代やセカンドオピニオン料、分娩料、紹介状のない初診料、駐車料金などが値上がり、患者負担が増えることが危惧されます。
病院経営本部が12月25日に発表した「新たな病院運営改革ビジョン(素案)」には、1,511件のパブリックコメントが都民から寄せられました。多数の独法化反対の意見があったにもかかわらず、何ら考慮せず「ビジョン」は策定、発表されました。
東京都はこれまでも病院の統廃合や人員削減など、採算の取れる医療への「改革」を進めてきました。新型コロナウイルス感染症の拡大にみられる都内の医療現場は崩壊寸前の危機と報道されており、その要因は設備の整った病院の統廃合やベッド数の削減、医療物品の備蓄不足、そして医療を担う人材の定数を抑制してきた結果です。不測の事態に対応できる体制構築こそ、行政的医療を担う東京都の役割です。
独法化により、都立病院・公社病院は、「だれもが、いつでもかかれる病院」ではなくなります。

6 独法化方針の撤回に向けて全力でたたかう
都庁職衛生局支部は、組合員の身分を守り、都民のいのちと健康を守るための公的責任を追求し、地域の「守る会」や「都立病院の充実を求める連絡会」、地域団体とともに都民との大きな共同で反対運動に取り組みます。
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「新たな病院運営改革ビジョン」都庁職衛生局支部声明 2020年5月19日