2019年10月8日

第37回支部執行委員会

 

都立神経病院に対する「再編・統合について特に議論が必要」とする厚労省発表に強く抗議する(衛生局支部書記長コメント)

都庁職衛生局支部

書記長 矢吹義則

 

厚生労働省は9月26日、全国の公的・公立で運営する424病院について「再編・統合の議論が必要な病院」として実名で公表した。東京においては、10病院が名指しされ、都立病院では唯一、神経病院の名前があがった。公表した理由として、2017年実績で、がんや救急など高度な医療の診療実績が少ない病院や近隣に機能を代替できる民間病院がある病院を位置付けたとしている。今後は、都道府県が策定する地域医療計画に反映させるための協議を進め、2020年9月末までに対応方針を決めるよう求めている。

こうした突然の報道に対し、「地域医療の崩壊につながる」「地域の実態を見ていない」など、不安の声が全国からあがっている。

支部は、発表後の27日に開催された、大都市衛生医療による厚労省交渉において、厚労省(医政局・計画課)に対し、公表する理由など厳しく追及した。厚労省側も「今回の公表はあくまでも地域において議論を促すものであり削減ありきではない」と弁明するも、「説明不足」だったと認めている。さらに、全国知事会、市長会、町村会から批判が総務省によせられ、10月4日に「地域医療確保に関する国と地方の協議の場」が開催され、「再編統合」の再検証を要請したが、医療現場や自治体、住民には衝撃が走り、混乱も見られるとして、厚労省が地方に出向き、再検証に関する詳しい説明を10月中に行っていくことを確認している。

東京都の小池知事は、発表後の27日の会見の場で、「詳細な情報はまだ知らされていない」とし詳細な分析を進めるよう指示したとことを明らかにしている。

都立病院をめぐっては、経営委員会報告に基づき、地方独立行政法人化の検討に入り、今年の予算に検討予算として、1億6千万円計上している。こうした予算を使い、監査法人トーマツに「都立病院の経営のあり方に係る調査及び支援業務委託」契約を結び、3月に報告書がまとめられた。

 

神経病院は1980年に65床で開設。以来1985年までに296床となり、今日に至っている。2002年には、東京都指定難病医療拠点病院の認定を受け、多くの難病患者の治療を行い、神経難病医療実績は全国でもトップクラスの病院といえる。中でも、難治性てんかんの手術件数は、平成24年85件、25年128件、26年120件、27年115件と4年連続で国内トップの実績を誇る外科的治療を行っている。国が指定する難病であるALSの病態解明、治療法の解決に向けた研究にも積極的に取り組み、近年では院内に患者支援センターを立ち上げ、在宅難病患者に対する在宅医療支援にも取り組んでいる。

こうした実績から、都立神経病院は難病医療の専門病院として都内はもちろん全国からも入院患者が集まっており、難病患者にとっては無くてはならない大切な病院であり、ここ3年間の病床稼働率もみても職員の努力もあり、増えている実績が報告されている。再編

統合どころか、充実・発展させることこそが国の役割といえる。

さらに、将来に向けて「多摩メディカルキャンパス再編整備計画」が策定され、神経病院が「難病医療センター(仮称)」として充実し、建て替えることになっている。こうした実績を見れば、一律的な物差しではかる厚労省の再編統合計画は、神経病院の実態をみない「愚かでずさんな計画」と言わざるをえない。

政府・厚労省が進める医療費抑制、病床削減は神経病院など公表された病院だけの問題ではなく、国民の命と健康を守るすべての病院に対する攻撃としてとらえなければならない。

支部は、国が進める病床削減、都が進める都立病院の独法化に反対し、都民・地域住民の安心・安全な医療提供体制の確立に向けて奮闘する。